球状の石英ガラス粉を原料に使用して、光や流体を透過する開気孔型の多孔質材料を開発しました。
樹脂に比べて耐熱性に優れ、金属に比べて耐熱性や耐薬品性・耐食性に優れており、アルミナ等のセラミックスと比べて純度が高く、熱衝撃にも強い材料です。
開気孔であるため、気体や液体を透過します。
形状自由度が高く、円板(φ300mmまで可能)や円筒形状を製造することが出来ます。また、石英ガラス緻密体との溶接・接合により複合部品を製造することも出来ます。

石英ガラス多孔体の製品イメージ

石英ガラス多孔体製品例(円盤形状)

機能・特徴

耐熱性、耐熱衝撃性
球状の高純度石英ガラス粉から作られた石英ガラス多孔体は、高い耐熱性を持ち、熱衝撃にも強い材料です。1000℃の高温環境にも耐えることができ、酸化雰囲気でも安定して使用可能です。またセラミックスや一般のガラスでは破損してしまうような急熱急冷にも耐えることができます。
熱伝導特性、熱膨張特性
高純度石英ガラス多孔体の熱伝導率は非常に低いため、断熱性に優れています。
また、石英ガラスの熱膨張率は非常に低く、温度変化による寸法変化を低く抑えることができます。
耐薬品性、耐食性
高純度石英ガラス多孔体は、酸やアルカリに強く、樹脂や金属が使えなかった過酷な環境下でも使用する事が出来ます。
ただし、フッ酸や300℃以上のリン酸とは反応します。
光透過性、拡散性
透明な石英ガラス粉を原料としているため、アルミナ等のセラミック多孔体と違って、光を透過します。ただし多孔質のため、散乱光での透過ですので、見た目には白色で、不透明です。

光透過の実例(石英ガラス多孔体背面からライトを照射)

光拡散の実例(石英ガラス多孔体下面からレーザーを照射)

(1)全透過率スペクトル

全透過率スペクトル(例)

(2)全反射率スペクトル

全反射率スペクトル(例)

(3)透過光強度の角度依存性

透過光強度の角度依存性(例)

流体透過性
開気孔であるため、液体や気体を透過します。このためフィルターや担持体としての使用も可能です。
気孔径は、3~15μmまで対応でき、気孔率も、15~40%の範囲で対応可能です。
石英ガラス緻密体との複合化
石英ガラスとの溶接や接合をすることが出来るため、緻密体と多孔体の複合部品を作ることが出来ます。

純度
不純物の含有量が少ない合成石英ガラスを原料としており、非常に高純度です。また、石英ガラス粉を純化することで、さらに高純度な多孔体を製造することも出来ます。

材料特性

流量特性の一例(φ20x40L円筒形状)

技術解説

石英ガラス多孔体は、アルミナやジルコニア等のセラミックス材料のように粉体を焼き固めて作ります。液体に原料を混ぜたスラリーと呼ばれるものを型に流し込み、ゲルキャスト法と呼ばれる手法でスラリーをゼリーのように固めて成形します。セラミックス材料の成形においては、加圧や加温を必要とすることが多いですが、この方法では必要ありません。型の形状を工夫することで、複雑な形状でも比較的容易に製造可能です。
焼成では、一般的なガラス材料のように溶融せず、固化したスラリーを炉に入れて焼成します。高温で焼成することで、一つ一つの粒子がしっかりと結合し、強度を持った多孔体を得ることが出来ます。このため、脱粒の心配もありません。
原料の石英ガラス粉の粒度を管理することにより、気孔径や気孔率を制御することが出来ます。
また、石英ガラス粉を純化することで、さらに高純度な多孔体を製造することも出来ます。
石英ガラス多孔体は、粒子の隙間(気孔)が繋がって開気孔になっているため、液体や気体などの流体を透過することが出来ます。

用途例

フィルター、真空破壊用ディフューザー、真空チャック、触媒担体など。

用語解説

開気孔
外気と繋がった気孔。外気と繋がっていない気孔は閉気孔と呼ばれる。
ゲルキャスト
セラミックスの成形方法の一種で、鋳込み成形を進化させたもの。加圧成形などに比べて、安価に製造することが出来る。
スラリー
液体に固体粒子がまざった懸濁液で、濃厚なものをいう。
純度
物質中に含まれる主成分が占める割合。
耐熱衝撃性
急激な温度変化にどこまで耐えられるかを示す。特に水中などで急冷した際に、強度が急激に低下する温度を耐熱衝撃温度と呼び、ΔTで表すことがある。
熱膨張率
温度の上昇によって物体の長さ・体積が膨張する割合。

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