一般には不透明で可視光を透過しないセラミックスを透明化する技術を開発しました。ガラスや樹脂よりも耐熱性、強度、硬さに優れ、単結晶よりも形状自由度や量産性が高い材料です。現在、YAG(Y3Al5O12 アルミン酸イットリウム)及びY2O3(酸化イットリウム)の2種類の材質について透明化を実現しています。さらに、意図的に添加物をドープすることによって、波長変換などの光学機能を付与する事ができます。

機能・特徴

光透過性
透明セラミックスは、一般には不透明で可視光を透過しない多結晶材料でありながら、製造プロセスを高度に制御することにより、ガラスや単結晶材料であるサファイアと同等の光透過性を示します。これらの透明セラミックスは、可視から中赤外の波長光帯域で、透過率がYAGは約84%、Y2O3は約81%であり、材料の屈折率より算出される透過率と同等の透明度を有しています。

透明セラミックスの直線透過率

耐熱性、強度、硬度
高温の焼結によって製作されるセラミックス材料であるため、光学ガラスや光学樹脂より耐熱性、強度硬さに優れています。1200℃程度の高温環境でも透明度を損なわず、酸化雰囲気でも安定して使用する事ができます。
耐薬品性、耐食性
高純度で緻密な透明セラミックスは、酸やアルカリに強く、また、腐食性の高いハロゲンプラズマにも優れた耐食性を示します。光学ガラスや樹脂では使えなかった過酷な環境でも使用する事が可能です。
光学機能
透明セラミックスに添加物を意図的にドープすることによって、波長変換などの新たな光学機能を付加させることができます。例えば、YAGやY2O3にNd(ネオジム)やYb(イッテルビウム)を添加した透明セラミックスでは、レーザーの発振に成功し、単結晶と同等の特性が得られています。
量産性
単結晶材料の場合は一般的にインゴット(単結晶の塊)から切り出して製品を作製するので、材料ロスが大きく、加工にも手間と時間がかかります。一方、セラミックスは製品に近い形状で成形-焼結して作製する事が可能なので、量産品はもとより、少量サンプルや多品種製品の製造にも適しています。

材料特性

技術解説

セラミックスは粉体を焼き固めることによって作製されるため、一般に光を散乱させる因子を多く内包しています。光を散乱させる因子としては主に空孔や異相、粒界への不純物偏析などがありますが、セラミックスの製造プロセスを高度に制御することによりこれらの光散乱要因を取り除き、YAG (Y3Al5O12 アルミン酸イットリウム)及びY2O3(酸化イットリウム)に関して透明なセラミックスを開発しました。これらの透明セラミックスは多結晶体でありながら、可視から中赤外の波長光帯域での透過率がYAGは約84%、Y2O3は約81%であり、材料の屈折率より算出される透過率と同等の透明度を有しています。

セラミックスにおける光散乱要因

透明Y2O3セラミックスの微構造

用途例

レンズ材、窓材、レーザー材、シンチレーター等

外部発表

Making and properties of transparent YAG ceramics
M. Fujita
Advanced Solid-State Photonics 2008, Ceramic Lasers Summit, Nara.
Precision evaluation of optical properties of transparent ceramics
Y. Yanase, M. Fujita, M. Irie
The 24th Japan-Korea International Seminar on Ceramics, Kakegawa, 2007.
Development of transparent polycrystalline ceramics and evaluation of ceramic laser
I. Imai, M. Fujita, H.Oishi, M. Irie, S. Kimijima and T. Miyai
Optics & Photonics Japan 2006, Ceramic Laser International Workshop, Tokyo.

用語解説

多結晶
多数の微小な結晶粒から構成されていることを示す。互いに隣接する結晶間に結晶粒界と呼ばれる界面が存在する。多くの金属やセラミックスは多結晶体である。
ドープ(ドーピング)
材料の物性を変化させたり新たな機能を付与するために少量の添加物を導入すること。その添加物をドーパントと呼ぶ。
屈折率
材料が光をどれだけ屈折させるかを示す材料固有の値。レンズとして使用する場合、屈折率の大きな材料を用いるほど、厚みを薄くする事が出来る。
アッベ数
屈折率の分散(波長による屈折率の差異)の度合いを表す尺度。アッベ数が大きいほど分散が小さく、屈折率の波長による差異が小さい。

資料請求・お問い合わせはこちら

このページのTOPへもどる