ARISTORUM® ESCは絶縁性基板の真空中での保持に利用可能な石英ガラス製の静電チャック(ESC)です。従来方式の静電チャックでは難しかった電気絶縁性の基板を吸着・脱離できるので、裏面金属膜の形成・除去工程の削減が可能です。
ARISTORUM® ESCには二つのタイプがあり、お客様の用途に合わせていずれかのタイプをお選びいただけます。一つは低脱ガス性に優れ、高真空中で使用可能なタイプ(金属電極埋設型)、もう一つは全体が無色透明で、透過光により吸着対象物のセンシングが可能なタイプ(透明電極埋設型)です。

金属電極埋設型

透明電極埋設型

機能・特徴

吸着力特性
従来の静電チャックではシリコンなどの導体しか十分な吸着力を得ることができませんでした。ARISTORUM® ESCはサファイア・石英ガラス・アクリル樹脂などの絶縁体に対しても、1kPa(≒10gf/cm2)以上の吸着力を得ることが可能です。従って、MEMSやLEDなどの製造において、真空環境での絶縁性基板吸着保持を必要とする工程での利用が可能です。
※大気中においては真空中に比べて吸着力が低くなる場合がありますので、大気中で使用する場合にはあらかじめご相談下さい。

ARISTORUM® ESCの吸着力測定例

また、ARISTORUM® ESCは、お客様ごとに吸着力特性をカスタマイズしたものを提供することが可能です。誘電層厚を始めとする静電チャックの構造を制御して、ご要望に応じた提案をさせていただきます。

誘電層厚によるカスタマイズ例(吸着対象物:サファイア)

脱着性
従来の静電チャックでは、吸着保持をしている間に、誘電層での微量な漏れ電流の影響によって基板のチャージアップが生じ、印加電圧をゼロにしても基板を脱離できない現象(デチャック不良)が生じることがあります。ARISTORUM® ESCでは誘電層に高絶縁性の石英ガラスを用いているため、デチャック不良が生じにくく、瞬時の吸着・脱離が可能です。

ARISTORUM® ESCの吸脱着性測定例

耐熱性
金属配線埋設型の最高使用温度は300℃、透明電極埋設型の最高使用温度は120℃です。吸着力は温度によって変化し、ある温度までは温度上昇に伴って増加しますがそれ以上では減少に転じます。
※高温での長時間の使用により寿命が短くなる場合があります。

金属配線埋設型の吸着力測定例

サイズと構造
ARISTORUM® ESCはタイプによって下記のサイズと形状に対応可能です。
 金属配線埋設型 : 最大 φ298mm または □210mm
 透明電極埋設型 : 最大 φ400mm または □400mm
 
 

ARISTORUM® ESCの構造

 
 

 

材料特性

石英ガラスの特性
石英ガラスは純粋なSiO2からなるガラスで、半導体製造工程で用いられる代表的な素材の一つです。特に絶縁性が非常に高いため、高電圧の印加が必要とされる静電チャックに適した素材です。

技術解説

静電チャックの吸着原理
静電チャックは吸着原理の違いによって(1)クーロン力タイプ、(2)ジョンソン・ラーベック力タイプ、(3)グラジエント力タイプの3タイプに分類されます。ARISTORUM® ESCはグラジエント力タイプの静電チャックです。それぞれの吸着原理は以下のとおりです。
(1)クーロン力タイプ
電極に印加された電荷に対して被吸着基板が静電誘導あるいは誘電分極によって帯電し、電極の電荷との間のクーロン力で吸着します。クーロンの法則を利用した最もオーソドックスな静電チャックです。電極上部の誘電層には高抵抗材料が用いられます。基本的には自由電子を持つ導電性基板の吸着に使用され、絶縁体に対しては吸着力が弱くなります。ポリイミド製静電チャックが代表的で、エッチング装置用に多く使用されます。
(2)ジョンソン・ラーベック力タイプ
電極に印加された電荷は、誘電層を通って誘電層最表面に移動します。この電荷に対して被吸着基板が静電誘導あるいは誘電分極により帯電して吸着します。ジョンソン・ラーベック効果を利用するため、電極上部の誘電層は抵抗を意図的に低下させた材料が用いられます。作用する電荷と被吸着基板の距離が非常に近いため、吸着力が強いのが特徴です。基本的には導電性基板の吸着に使用され、絶縁体に対しては吸着力が弱くなります。また、誘電層内に電荷が蓄積されるため、電圧印加を止めても残留電荷による吸着力が残留します。窒化アルミ(AlN)製静電チャックが代表的で、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置用に多く使用されます。
(3)グラジエント力タイプ
電極に印加された電荷に対して被吸着基板が静電誘導あるいは誘電分極により帯電して吸着します。電極を細くかつ間隔を狭くすることで大きな不平等電界を形成し、グラジエント力によって他の方式に比べて絶縁性基板を強く吸着できます。電極間隔が狭いほど電界強度の勾配が大きくなり、吸着力が増します。電極間隔が狭いため、絶縁破壊を生じないように電極上部の誘電層には高抵抗材料が用いられます。クーロン力タイプの改良版であり、絶縁性基板の吸着に最適です。

各種静電チャックの吸着原理

用途例

MEMSやLEDなどの製造工程で用いられる真空チャンバー内での絶縁性基板の吸着保持や真空チャンバー内への絶縁性基板の搬送など

用語解説

絶縁体(ぜつえんたい insulator)
106Ω・m以上の体積抵抗率を持つ物質のこと。10-6Ω・m以下は導体、これら以外は半導体と呼ばれる。
静電誘導(せいでんゆうどう electrostatic induction)
ある極性に帯電した帯電体に導体が接近すると、導体の帯電体に近い面には帯電体と逆の極性の電荷が現れ、反対の面には帯電体と同じ極性の電荷が現れる現象。
誘電分極(ゆうでんぶんきょく dielectric polarization)
静電誘導と同様に、帯電体の絶縁体への接近により絶縁体の表面に電荷が現れる現象。導体の場合は自由電子の移動によって生じるが、絶縁体の場合には構成する原子と電子の偏りによって生じる。そのため、現れる電荷量は導体に比較して少ない。
クーロン力(くーろんりょく Coulomb’s force)
電荷を持つ二つの物体間に働く力。その大きさは、各々の電荷の量に比例し、各々の物体間の距離の二乗に反比例する。またその方向は、両者を結ぶ直線の方向であり、両方の電荷が同種ならば反発する方向に働き、同種なら引っ張り合う方向に働く。
ジョンソン・ラーベック効果(じょんそん・らーべっくこうか Johnsen-Rahbek effect)
接触する二つの物体のそれぞれに電圧を印加して電流を流した場合、物体間の接点における接触抵抗によって急激な電圧降下が生じ、極めて近接して対向する接触面の間に異種電荷が蓄積され、物体間に引力が生じる現象。
グラジエント力(ぐらじえんとりょく Gradient force)
不平等電界中の物体に作用する力。誘電泳動力とも呼ばれる。物体の誘電率と媒質の誘電率の差によって、正の誘電泳動力(電界強度の大きくなる方向に作用する力)と負の誘電泳動力(電界強度の小さくなる方向に作用する力)があるが、真空中や空気中の物体に対しては専ら正の誘電泳動力が働く。またこの力は電極の極性や直流電界・交流電界に関係なく作用し、電界の方向によらず電界強度の大きくなる(あるいは小さくなる)方向へ作用する。
MEMS(めむす/えむいーえむえす Micro Electro Mechanical Systems)
微小電気機械システム。MST(Micro System Technology)[欧州]、マイクロマシン[日本]とも呼ばれる。主にシリコン基板やガラス基板に形成された可動部を有する微小デバイスの総称で、半導体デバイス製造技術によって作られる。代表的な例として3次元加速度センサやDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)、インクジェット・プリンタ・ヘッドが挙げられる。

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