セラミックス製細胞培養担体

はじめに

培養ディッシュなどの汎用的な培養基材を用いた従来の二次元培養は細胞の形態や機能が生体内の細胞とは異なることが指摘され、生体外で生体内と同様の三次元細胞を培養する技術が広く求められています。我々は独自の材料成形技術を用い、生体外で三次元に細胞を培養するのに適した二種類のセラミックス製担体を開発しました。

開発内容

microwell担体

担体表面に同一形状のwell(穴)を多数形成し、均一で微小な培養空間を多数提供します。wellは基本的に直径100〜1000ミクロメートル、深さ50〜500ミクロメートルの範囲で作製可能です。また、細胞が接着するwell表面の微細構造は多孔質から緻密質まで様々に変化させることが可能です。(図1)
microwell直径200ミクロメートルのセラミックス製担体でマウスES細胞を3日間静置培養したところ、microwell内で未分化状態を維持しつつ均一な大きさのES細胞塊を多数形成できました。(図2) 未分化状態の確認はALP活性とOct-4の発現で確認しました(信州大学医学部組織発生学講座で実施)。
なお、マウスのES細胞塊はフィーダー細胞(feeder cell)を用いずに、セラミックス製担体上に直接播種で形成しています。

microwell担体外観
図1. microwell担体外観

均一なマウスES細胞塊
図2. 均一なマウスES細胞塊

高気孔率担体

高気孔率担体は気孔をつなぐ連通孔を大きくする事で、細胞を担体内に容易に侵入させる事ができ、担体内部においても三次元的に細胞を培養する事が可能です。気孔率は概ね50〜95%の範囲で、気孔径は概ね50〜1000ミクロメートルの範囲で作製可能です。(図3)

高気孔率担体外観
図3. 高気孔率担体外観

高気孔率担体の培養例

骨芽細胞様細胞担体材質:ハイドロキシアパタイト
図4. 骨芽細胞様細胞
担体材質:ハイドロキシアパタイト

マウス繊維芽細胞担体材質:チタニア
図5. マウス繊維芽細胞
担体材質:チタニア

マウスES細胞担体材質:ジルコニア
図6. マウスES細胞
担体材質:ジルコニア

用語解説

  • ES細胞(いーえすさいぼう)

    動物の発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊より作られる幹細胞細胞株のこと。生体外ですべての組織に分化する分化多能性を保ちながら、無限に増殖することができるため、再生医療などへの応用が期待されています。

このページのTOPへ戻る